はじめに
イギリス(UK)のドローン規制は、EU 離脱(Brexit)後、欧州航空安全機関(EASA)の規則をベースにしつつも、英国民間航空局(CAA)による独自の道を歩んでいます。基本的な考え方は EU と似ていますが、ID 制度や将来のクラス分類などで重要な違いがあります。本記事では、2025 年現在の CAA が定めるドローン規制のポイントと、今後の変更点について解説します。
必須の ID 登録:Operator ID と Flyer ID
イギリスでドローンを飛行させるには、まず 2 種類の ID 登録を理解する必要があります。
- Operator ID (オペレーター ID): ドローンの所有者または責任者が登録します。250g 以上の機体、またはカメラ付きの機体(おもちゃを除く)を所有する場合に必須です。ID は 1 年間有効で、機体に表示する必要があります。
- Flyer ID (フライヤー ID): ドローンを操縦する人が取得します。250g 以上の機体を飛行させる場合、オンラインの理論テストに合格すると発行されます。ID は 5 年間有効です。
つまり、「所有者」と「操縦者」が別々に登録・テストを受ける必要があるのが特徴です。
Open カテゴリー:3 つの飛行区分
EU と同様、低リスクな飛行は「Open カテゴリー」に分類され、飛行場所のリスクに応じて 3 つのサブカテゴリーに分かれています。
A1: Flying 'Over' People
- 対象ドローン: 250g 未満の軽量なドローン(クラス C0 または C1)。
- ルール: 人の集まり(群衆)の上空でなければ、第三者の上空を飛行することが許されます。
A2: Flying 'Close To' People
- 対象ドローン: 2kg 未満のドローン(クラス C2)。
- ルール: A2 CofC (Certificate of Competency) という資格を取得したパイロットは、第三者から水平に 30m(低速モード時は 5m)の距離を保って飛行できます。
A3: Flying 'Far From' People
- 対象ドローン: 25kg 未満のドローン(クラス C3, C4, またはクラスマークのないレガシードローン)。
- ルール: 人や建物から十分に離れた場所(最低 150m)で飛行させる必要があります。
将来の規制変更(2025 年提案)
2025 年 5 月、CAA は規制をより分かりやすく、安全にするための変更案を運輸省に提出しました。これらは将来のイギリスのドローン規制の方向性を示しています。
- UK クラスマークの導入: 現在は EU の C クラス分類が使われていますが、将来的にはイギリス独自の「UK クラスマーク(UK0〜UK6)」が導入される予定です。
- Remote ID の導入: 2026 年以降、新しい UK クラスマークのドローンから段階的に「Remote ID」(機体識別情報を発信するシステム)の搭載が義務化される計画です。
- レガシードローンの扱い: クラスマークのない既存のドローンの移行期間が 2026 年 1 月まで延長され、その後も恒久的に使用できる道筋が検討されています。
- 登録要件の変更: 現在 250g 以上が対象の Flyer ID テストが、将来的には 100g 以上のドローンに拡大される可能性があります。
外国人旅行者のための注意点
イギリスでドローンを飛行させたい外国人旅行者は、英国民間航空局(CAA)の定める手続きに正確に従う必要があります。EU のライセンスが使えないなど、重要な注意点があります。
-
イギリス独自の登録が必須: 外国人であっても、イギリス国内でドローンを飛行させるには、CAA のシステムでFlyer IDとOperator IDの両方を取得する必要があります。手続きはオンラインで完結します。
-
EU の資格は無効: EU 離脱(Brexit)により、EU 加盟国で取得したオペレーター登録やパイロット資格はイギリスでは無効です。イギリスを訪れる際は、必ず CAA で新たに登録とテストを行ってください。
-
登録対象: 250g 以上のドローン、または 250g 未満でもカメラが搭載されているドローンは、すべて登録の対象となります。
-
保険: 商用目的の飛行では賠償責任保険への加入が法律で義務付けられています。趣味の飛行であっても、万が一の事故に備え、保険に加入しておくことを強くお勧めします。
結論として、イギリスでのドローン飛行は、EU とは独立した手続きが必要です。渡航前に CAA の公式ウェブサイトで最新情報を確認し、オンラインでの登録とテストを済ませておくことが不可欠です。
まとめ
イギリスのドローン規制は、EU の枠組みを参考にしつつも、Operator/Flyer ID 制度や将来の UK クラスマーク導入など、独自の規制を構築しています。特に、所有者と操縦者の両方に関わる ID 登録は、イギリスでドローンを始める上での最初の重要なステップです。今後の規制変更の動向にも注意しながら、安全な飛行を心がけましょう。