はじめに

韓国のドローン規制は、国土交通部(MOLIT)と韓国交通安全公団(KOCA)が管轄し、「Drone One-Stop」ポータルサイトを通じて一元管理されています。規制は多段階の許可と義務から成り立っており、特に国家安全保障上の理由から、趣味の飛行であっても空中撮影には国防省(Ministry of National Defense)の事前許可が必須である点が、他国と大きく異なる最も重要な特徴です。

本記事では、2025 年時点の韓国のドローン規制について、公式情報源へのリンクを交えながら詳しく解説します。

Step 1: 機体登録とオンライン講習

ドローンを飛行させる前の準備段階です。すべての手続きは「Drone One-Stop」ポータルで行います。

  • 機体登録: 最大離陸重量が 250g を超えるドローンは、すべて「Drone One-Stop」で実名登録が義務付けられています。
  • オンライン知識コース: 250g を超え 2kg 以下のドローンを飛行させる場合、趣味の利用であっても、オンラインで 4 時間の基礎知識コースを受講し、テストに合格する必要があります。

Step 2: 賠償責任保険への加入

登録対象となる 250g 超のドローンは、対人・対物賠償をカバーする保険への加入が義務付けられています。補償額は最低1.5 億ウォン(約 1,500 万円)と定められています。

Step 3: 飛行ルールと飛行許可

韓国の基本的な飛行ルールは以下の通りです。

  • 高度・時間: 高度は地上から 150m 未満、時間帯は日の出から日没まで。
  • 飛行方法: 常に操縦者の目視範囲内で飛行させる。
  • 禁止事項: 飲酒状態での操縦、飛行中の落下物投下、人口密集地域やイベント上空の飛行は禁止されています。
  • 禁止エリア: 空港周辺(半径 5.5km〜9.3km)、軍事施設、そしてソウル市内の大部分(特に漢江の北側、P-73/R-75 飛行禁止・制限エリア)など、広範囲に飛行禁止区域が設定されています。

これらの禁止エリアやルール外(夜間、目視外など)で飛行したい場合は、事前に「Drone One-Stop」ポータルを通じて地方航空庁から飛行許可を取得する必要があります。飛行禁止エリアの詳細は、ポータル内の地図サービスで正確に確認できます。

Step 4: 【最重要】写真・ビデオ撮影には国防省の許可が必要

これが韓国のドローン規制における最大のハードルであり、最も注意すべき点です。

たとえ趣味の飛行で、飛行許可が不要なエリア(例:漢江ドローン公園)であっても、ドローンに搭載したカメラで写真やビデオを撮影し、それを記録・保存する場合は、事前に国防省への許可申請が別途必要です。

この申請も「Drone One-Stop」ポータルを通じて行いますが、審査は国防省が担当します。申請から承認までには通常 4 営業日以上かかるとされており、撮影目的や場所が厳しく審査されます。無許可での撮影は、航空安全法に基づき厳しく罰せられます。

外国人旅行者のための注意点

  • 手続きはすべて必須: 上記の機体登録、保険加入、各種許可申請は、外国人旅行者にも例外なく適用されます。
  • 言語と認証の壁: 「Drone One-Stop」ポータルは韓国語が基本であり、本人確認手続き(韓国の携帯電話番号や公的認証書が必要な場合が多い)が外国人にとって大きな障壁となります。
  • 現実的な選択肢: これらの手続きの複雑さを考慮すると、外国人旅行者が韓国で合法的にドローンを飛ばし、撮影まで行うのは非常に困難です。最も現実的な方法は、ソウルの「漢江ドローン公園」のような指定されたドローン飛行エリアで、撮影機能を一切使わずに飛行を楽しむことです。

まとめ

韓国でドローンを飛行させるには、「機体登録」「保険加入」「飛行許可」「撮影許可」という複数のステップを、すべて「Drone One-Stop」ポータルを通じてクリアする必要があります。特に、趣味の空撮であっても国防省の許可が必須という点は、絶対に忘れてはならない重要なルールです。旅行で訪れる際は、これらの厳しい規制を十分に理解し、無許可での飛行や撮影は決して行わないよう、慎重な判断が求められます。

参照リンク