韓国のドローン物流は、国土交通部(MOLIT)が中心となって、事前に設定した航路・拠点・リアルタイム管理(安全管理)を前提に、自治体単位で運用範囲を拡大するのが特徴である。単発の実証だけでなく、K-Drone Deliveryという全国スキームで「航路・拠点・管制(安全管理)」を標準化し、自治体に横展開している点が他国との大きな違いだ。島嶼・公園・港といった"空域と運用が設計しやすい場所"から広げ、医療(血液等)や緊急物資(AED)など公共性の高いユースケースも同じ枠で拡張している。


国主導スキーム:K-Drone Delivery(全国展開型の実証→準サービス化)

2024年に開始したK-Drone Deliveryは、2025年に対象を大幅拡大し、島嶼・公園・港湾などでの運用が示されている。昨年実績として2,993便/10,635kmが報告されている。

K-Drone Delivery拡大の中身

展開領域内容
島嶼部・沿岸住民向け物資配送だけでなく、海岸監視や海洋ごみ回収など"公共サービス用途"も含めて展開
都市部公園都市公園・観光地での配送(実証)を段階導入し、都市型配送の要件を積み上げる設計
配送物の想定食事・日用品(重量上限の記載あり)、緊急物資(AED・救急キット等)

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医療物流(血液・医療品):"救急・軍・島嶼"で価値が出やすい

緊急手術を想定した"血液輸送"の訓練・実証

Daecheongdo(大青島)で、緊急手術用として模擬血液500ml+アイスパックを搭載し、医療物資ドローン輸送を実施した事例が報じられている。

機体タイプ積載能力航続距離
電動VTOL3kg150km
マルチコプター5kg35km

農村医療:薬剤配送+オンライン診療(研究・デモ)

農村診療所を対象に、薬剤のドローン配送とオンラインカウンセリングを組み合わせたデモが論文として整理されている(医療アクセス改善の文脈)。

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島嶼・沿岸住民向け:自治体の"生活インフラ"としての配送

Tongyeong(統営市):島民向け配送サービス

統営市が、島の住民に向けて医薬品を含む日用品をドローン配送するサービスを開始したと報じられている。島嶼居住者の生活利便性(ラストマイル)に直結するタイプである。

Yeosu(麗水市):Skyports×RigiTechの島間配送(BVLOS・20〜60km)

Skyports Drone ServicesとRigiTechが、麗水本土〜島しょ部で、医薬品・食品などを運ぶプロジェクトを発表。BVLOSで20〜60kmの区間を想定し、3kgペイロードの記載がある。島が多い地域で"エアブリッジ"を作る発想である。

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既存インフラ(郵便・港)起点の実証

Korea Post(郵便):島への郵便輸送(3.8km・10分・8kg)

Korea Postが島(Deungnyang Island)に郵便を運ぶ実証で、3.8kmを10分、郵便物8kgのデータが示されている(最大10kg機体の言及もあり)。

項目詳細
距離3.8km
所要時間10分
積載量8kg(機体は最大10kg対応)

Pablo Air:仁川港を起点にした"海上長距離"配送(57.5km)

Pablo Airが、仁川港を起点に島しょ向け配送を構想し、海上57.5kmの長距離飛行を実施した旨がまとめられている(港の離発着ゾーン整備の話も含む)。

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都市型・商用(フード/リテール)事例:実証から"有料・実サービス"へ

Sejong(世宗市):ドローンによるフードデリバリー(Domino's連携、2.2〜2.6km)

MOLITとドローン企業、Domino'sが連携したセジョン市の事例では、2.6km/2.2kmの2ルート、週末運用、アプリ追跡とパスワード受け取り等、都市公園型のオペレーション設計が具体的である。

項目詳細
ルート2ルート(2.6km/2.2km)
運用週末
機能アプリ追跡、パスワード受け取り

E-Mart24:コンビニのドローン配送(実運用寄り)

コンビニチェーンE-Mart24が、ドローン配送の取り組み(パイロット運用)を進めている事例。小口・即時の商用ニーズを背景にしたタイプである。

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参考動画


モンゴル・タイとの比較で見える"韓国らしさ"

観点韓国モンゴルタイ
展開モデルK-Drone Deliveryという全国スキームで航路・拠点・管制を標準化し自治体に横展開首都の渋滞×医療(血液)から定期運航→郵便→フードへと段階拡張離島・遠隔医療(海上ルート)と都市部のUTM×5Gの二極で進展
特徴的なユースケース島嶼・公園・港から広げ、医療・緊急物資など公共性の高い用途も同じ枠で拡張医療→郵便→フードの順に公共性の高い領域から段階展開海上12kmの医療配送、都市部でのUTM×5G統合実証
制度面国主導のK-Drone Deliveryで航路・拠点・安全管理を一元化MSDDの商用ライセンス取得、運用実績の積み上げRegulatory Sandbox(EECi)が明確、UTMの整備が前面

韓国は、単発の実証だけでなく、全国スキームで標準化→横展開という構図が特徴的であり、島嶼・公園・港といった"空域と運用が設計しやすい場所"から広げ、医療や緊急物資など公共性の高いユースケースも同じ枠で拡張している。


参考リンク一覧

国主導スキーム(K-Drone Delivery)

医療物流

島嶼・沿岸住民向け配送

郵便・港起点の実証

都市型・商用(フード/リテール)