はじめに

シンガポールは、そのコンパクトな国土と世界有数のハブ空港を持つ地理的条件から、ドローンの飛行に関して非常に体系的で厳格なルールを設けています。規制はシンガポール民間航空庁(CAAS)によって管理されており、安全を最優先する姿勢が明確です。本記事では、2025 年時点でのシンガポールのドローン規制、特に旅行者が注意すべき点について解説します。

登録とトレーニング:飛行前の基本要件

シンガポールでドローンを飛行させるには、まず登録とトレーニングの要件を理解する必要があります。

機体登録

  • 対象: 重量 250g を超えるドローンは、屋外で飛行させる前にすべて CAAS への登録が義務付けられています。これは外国人旅行者も例外ではありません。
  • 手続き: 16 歳以上であれば、CAAS の UA Portal というオンラインサイトから登録が可能です。外国人は、SingPass の代わりに UAPass アカウントを作成して手続きを進めます。登録料として 25 シンガポールドルが必要です。
  • 2025 年の変更点: 2025 年 2 月 14 日より、これまで外国人に課せられていた「登録は 1 台まで」という制限が撤廃され、複数台の登録が可能になりました。

パイロットのトレーニング

  • 1.5kg まで: 趣味の範囲で、総重量 1.5kg 以下のドローンを飛行させる場合、特別な操縦ライセンスは不要です。
  • 1.5kg から 7kg まで: この重量のドローンを公共の場所(公園など)で飛行させる場合は、「UA Basic Training Certificate」を取得する必要があります。

2025 年の新ルール:リモート ID の義務化

2025 年 12 月 1 日から、登録対象となるすべてのドローン(250g 超)には、Broadcast Remote Identification (B-RID) と呼ばれるリモート ID 機器の搭載が義務化されます。これはドローンの位置情報や操縦者の情報をリアルタイムで発信する「デジタルのナンバープレート」であり、規制遵守の重要な要素となります。

飛行許可(Activity Permit)が必要なケース

シンガポールでは、たとえ趣味の飛行であっても、以下のような特定の条件下では事前に CAAS から「Class 2 Activity Permit」を取得する必要があります。

  • 高度: 地上 200 フィート(約 60m)を超える高度で飛行する場合。
  • 場所: 空港や軍事基地から 5km 以内で飛行する場合。
  • その他: 制限区域や危険区域、管理空域内で飛行する場合。

許可申請もオンラインポータルから行いますが、承認には時間がかかるため、十分な余裕を持った計画が必要です。

外国人旅行者のための注意点

  • 手続きはオンラインで: 登録や許可申請はすべてオンラインで可能ですが、事前に UAPass アカウントの作成などが必要なため、渡航前に済ませておくのが賢明です。
  • 飛行エリアの確認は必須: シンガポールは飛行禁止・制限エリアが非常に多いです。飛行前には、必ず公式の「OneMap」アプリなどを使って、その場所が飛行可能かどうかを確認してください。
  • 罰則は厳しい: 無登録や無許可での飛行に対する罰則は非常に厳しく、高額な罰金や懲役刑が科される可能性があります。

まとめ

シンガポールでのドローン飛行は、事前のオンライン手続きと飛行エリアの確認が不可欠です。特に 2025 年からはリモート ID の搭載も義務化され、より厳格な管理体制へと移行します。ルールは複雑に見えますが、旅行者でも手順を正しく踏めば、この美しい都市国家での空撮を楽しむことが可能です。計画的な準備を心がけましょう。