モンゴル(特に首都ウランバートル)では、慢性的な交通渋滞、道路インフラの制約、医療現場の緊急輸送ニーズなどを背景に、ドローンを物流インフラの一部として取り込む取り組みが進んでいる。特徴は、医療(血液)→郵便→フードの順に、公共性・緊急性の高い領域から段階的にユースケースを拡張している点だ。血液輸送では実運用(定期配送+緊急対応)まで到達し、郵便・フードは試験運航・実証段階の事例が確認できる。主要な実装は、Newcom Group傘下の運航主体(MSDD)と日本側(Aeronext等)が連携し、BVLOS(目視外)や有人地帯上空の自動飛行(日本の「レベル4相当」と表現される)に踏み込んでいる点にある。


主要プレイヤー(組織・企業)

Aeronext(日本)

モンゴルでの血液輸送、郵便配送、フードデリバリーの各プロジェクトで中核として関わるドローン関連企業である。機体(AirTruck等)や運航ノウハウ、システム面での技術提供を行っている。

Newcom Group(モンゴル)

モンゴル側の主要パートナー。子会社MSDDを通じたドローン物流の運用体制構築を推進している。

MSDD(Mongolian Smart Drone Delivery LLC)(モンゴル)

Newcom Group子会社として、商用ドローン飛行ライセンスの取得血液配送の実運用に関与した主体として報告されている。

KDDIスマートドローン(日本)

2023年の血液輸送実証に関するリリースで共同実施者として記載されている。

Mongol Post(モンゴル郵便)(モンゴル)

2025年の郵便配送(試験運航)で連携先として参画している。

参考リンク


事例① 医療物流(血液輸送)

2023年:血液輸送の実証(ウランバートル)

ウランバートル市内で、国立輸血センターと病院間を結ぶルートで、血液等の輸送実証が行われた。往復約9.5km(片道4.75km)のフライトで、約13分で到達した旨が報告されている。

また、外気温-15℃、標高約1,300mという厳しい条件下で、有人地帯上空を含む自動飛行(日本での「レベル4」に相当すると表現)を成功させた点が強調されている。

機体・運用要素

  • 物流専用ドローン:AirTruck(最大積載5kg、最大飛行距離20km)
  • モバイル通信を用いた運航管理・遠隔監視(日本からのリモート監視も実施)

2024年:実運用(定期配送)と緊急輸送(人命救助)

Aeronextの発表では、MSDDが2024年6月に商用運航ライセンスを取得し、同年8月から市内3病院への血液配送を実運用として開始したと記載されている。

また、2024年9月16日に緊急要請を受けて、国立輸血センターから病院へ血液を輸送し、「2人の命が救われた」としている(片道4.75kmを約13分)。

第三者メディア・現地報道による補強

ドローン業界メディアは、ウランバートルの環境条件(強風・低温・高地)と、人口集中による渋滞問題を背景に、血液配送の実証を紹介している。

現地報道では、血漿800gを約5km・11分で配送し、車だと30〜40分かかっていた(時間短縮)といった効果が述べられている。

参考リンク


事例② 郵便物流(Mongol Post連携)

Aeronextの発表によると、2025年6月16〜18日にウランバートル市内で、Mongol Post支店へ郵便物を配送する3日間の試験運航を実施している。配送は片道3.58km、4.5〜4.8kgの郵便物を約7分で運び、到着後に車両へ積み替えて最終配送へ回す運用が説明されている。

この「ドローン+車両」のハイブリッド運用は、都市物流での現実的な組み込み方(ミドルマイル寄り)として参考になる設計である。

参考リンク


事例③ フードデリバリー(都市―郊外の長距離配送)

Aeronextの発表では、2025年7月25日に、モンゴル初のドローンによるフードデリバリー試験を実施したとしている。ウランバートル中心部から郊外施設まで片道約16.5km(往復33km)、高低差200mのルートで、料理(合計約2,420g)を運搬し、片道約23分で配送した。

これは医療・郵便に続く第3のユースケースとして、ドローン物流の商業領域への拡大を示す事例である。

参考リンク


モンゴルでドローン物流が進む背景(課題とニーズ)

ウランバートルは人口集中(国人口の約半数が集中という記述)と慢性的渋滞、道路インフラ不足が課題とされ、医療物流にも影響があると説明されている。

JICAの記事では、救急車が渋滞に巻き込まれること、輸血センターが限られ、病院が日常的に血液を取りに行く運用、看護師の同乗負担などが語られ、ドローン輸送による改善余地が示されている。

課題詳細
交通渋滞国人口の約半数がウランバートルに集中し、慢性的な渋滞が発生
道路インフラ道路整備が追いつかず、特に郊外へのアクセスが困難
医療アクセス輸血センターが限られ、病院が血液を取りに行く運用で看護師の負担が大きい
救急対応救急車が渋滞に巻き込まれ、緊急搬送に時間がかかる

参考リンク


示唆(他国・日本への応用観点)

1. 高公共性(医療)からの導入

まず血液輸送のように社会受容性が高い用途で運用実績・許認可・体制を整え、その後に郵便やフードへ展開する「段階戦略」が読み取れる。

2. "ドローン+車両"のハイブリッド運用

郵便では支店までドローンで運び、そこから車両で最終配送する設計が明示されており、都市物流での現実的な組み込み方(ミドルマイル寄り)として参考になる。

3. 制度・人材・運航体制の積み上げがユースケース拡張を支える

MSDDの商用ライセンス取得や、運用実績(複数回の配送成功)が、次の用途(郵便・フード)への展開を後押ししている構図である。


参考動画(YouTube)


参考リンク一覧

主要プレイヤー

医療物流(血液輸送)

郵便物流

フードデリバリー

背景・課題