本記事は「確度重視(一次情報=公式サイト製品ページ等で"ドローンポート製品"が明記されている企業のみ)」を条件に、日本企業のドローンポート(離着陸・格納・充電・遠隔運用の拠点設備)を整理したものだ。現時点で一次情報から"製品として明確に追える"国内プレイヤーはまだ多くなく、少数精鋭+用途特化の市場構造が見える。
ドローンポートとは(この記事の定義)
ドローンポート(ドローンドック)は、ドローンの離着陸・格納・充電・遠隔監視/制御を担う設備(またはその中核ソフト)だ。現場に人が張り付かずに運用する「遠隔・無人化」を成立させるためのインフラで、設備単体というより**"ハード+運用ソフト+周辺センサー"のシステム**として整備されるのが主流だ。
「ドローンポート」と「ドローンドック」「Drone-in-a-Box」は、用語は揺れるが、本質的には同じ領域を指す。違いは「どこまでを製品の範囲と捉えるか」「責任境界をどこに置くか」にある。本記事では、これらを包括して「ドローンポート」と表記する。
企業一覧(一次情報確認済み)
「企業=日本」「製品=ドローンポート/ドックが明記」の条件を満たすものだけを掲載している。
| 企業 | 製品名(一次情報表記) | 区分 | 主な特徴(要約) |
|---|---|---|---|
| VFR | Drone Port for ACSL-PF2 | ハード | 全天候格納、マーカー着陸、自動充電 |
| VFR | EVO Nest | ハード | 自動離着陸・自動充電・遠隔運用の"Nest" |
| SORABOT | DroneNest | ハード | DJI Dock3等にも対応、仕様を整理して提示 |
| ブルーイノベーション | BEPポート|VIS | ソフト(VIS) | ISO 5491の考え方に沿う"VIS(情報管理)" |
| Red Dot Drone Japan | Drone Port | ハード | 待機・充電・無人運用が可能な格納庫 |
| IHI運搬機械 | DRONE PORT | ハード | ドローン着陸ポート、物流ノードとしての設計 |
| ウィンゲート | AtlasNEST | ハード | 全自動離着陸・自動バッテリー交換 |
カテゴリ別解説(ハード/ソフト/運用の視点)
ドローンポート市場は、同じ「ポート」でも"何を売っているか"が異なる。混同すると比較が難しくなるため、3分類で整理する。
ハードウェア型(ポート本体)
ハード型は「格納庫」だけでなく、正確な着陸 → 確実な充電 → 悪天候でも保護 → 遠隔から状態確認という連鎖を成立させる装置だ。
VFRの「Drone Port for ACSL-PF2」は、格納・充電・着陸の要素をまとめて"製品ページとして仕様説明している"点が強みだ。SORABOTは「DJI Dock3」「DroneNest」など複数のドローンポートを扱う形で仕様ページを構成しており、用途に応じた選定・運用を想定していることが読み取れる。
ハード型の評価ポイントは、耐候性(動作温度範囲、防水防塵等級、耐風速)、着陸精度の担保方式(マーカー、画像認識、GNSS、ビーコン等)、そして充電方式(接触充電、ワイヤレス充電)の3つに集約される。
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ソフトウェア型(VIS:Vertiport Information System)
複数拠点でドローンを無人運用する際、詰まるのは"箱"ではなく運用管理だ。
ブルーイノベーションは、ドローンポートの情報管理(VIS)を軸に、遠隔監視・制御・外部連携を想定した「BEPポート|VIS」として提示している。VISとは、ISO 5491(ドローンポート国際標準)の考え方に沿った情報管理システムで、ポートの状態監視、周辺状況の把握、外部システムとの連携を担う。
ソフトウェア型の価値は、ポート1台のときは見えにくいが、複数拠点・複数機の運用になるほど顕在化する。なぜなら、「どのポートで、どの機体が、いつ、どんな状態か」を統合管理できなければ、遠隔運用は成立しないからだ。
同社はVISに加えて「ドローン自動巡回システム」など、ドローンポートを含むシステムとしての提示もしている。防災領域では、一宮町の津波避難広報ドローンシステム(Jアラート連動)の実績もあり、ソフトウェアとハードと業務シナリオを統合したパッケージとして展開している。
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用途特化型(物流連携・自動バッテリー交換など)
物流連携:IHI運搬機械
IHI運搬機械は、ドローンが運んだ荷物をポートに格納し、モビリティ側へ受け渡す"物流ノード"としての発想が強い。一般的な点検用途のドローンドックとは異なり、地上搬送と空路搬送の接続点としてドローンポートを位置づけている。
ドローン物流が本格化した場合、こうした"地上搬送と接続する受け渡し拠点"の需要は増える可能性がある。IHI運搬機械は親会社IHIのインフラ事業の知見を持つ企業であり、物流インフラの設計という観点で差別化されている。
自動バッテリー交換:ウィンゲート
ウィンゲートのAtlasNESTは、「自動充電」ではなく「自動バッテリー交換」を中心に説明されている点が特徴だ。
充電式と交換式の違いは、運用思想に直結する。充電式は設備がシンプルだが、充電時間中は機体が稼働できない。交換式はバッテリーの在庫管理が必要になるが、交換後すぐに再出動できるため稼働率が高い。頻繁な出動が求められる監視・警備用途では、交換式の優位性が大きくなる。
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注目企業の深掘り
VFR:国産"製品ページが揃う"ドローンポートの代表格
VFRの強みは、ドローンポートを「格納庫」ではなく"無人運用のための装置"として、仕様・構造・運用を製品ページで読み取れる点だ。
Drone Port for ACSL-PF2は、国産ドローンメーカーACSLの機体「PF2」に対応した専用ポートだ。自動充電や着陸要件を含めて説明されており、「国産機体×国産ポート」の組み合わせとして、経済安全保障の文脈でも注目される。
格納・充電・マーカー着陸の要素が一体化されており、設備の全天候性(雨・風・積雪等への対応)も製品仕様として明記されている。国産ドローンの無人運用基盤を構築する上で、現時点で最も製品情報が整理された選択肢の一つだ。
EVO Nestは「自動離陸、着陸、充電のベース」として説明されており、ポート×遠隔システムの一体運用を想定していることがわかる。PF2以外の機体への対応も視野に入れた、より汎用的なポート製品として位置づけられている。
また、VFRはブルーイノベーションなど4社コンソーシアムで国産ドローンポートの開発にも参画しており、ISO 5491準拠の試作機をJapan Drone 2025で公開している。2027年の社会実装と量産化を目指すと展望が述べられている。
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SORABOT:仕様ページが"ポート選定ガイド"になっている
SORABOTは「ドローンポートの仕様」として、DJI Dock3とDroneNestを同一ページ内で整理し、温度・耐風・保護等級など運用上の観点も含めて提示している。
「自社のDroneNest」だけでなく、DJI製品も含めた複数選択肢を示す形で運用全体の入口として作られている点が特徴だ。これは、導入検討者が「どのポートが自分の現場に合うか」を判断する際のガイドとして機能する。
ドローンポート市場はまだ情報が少なく、「何を基準に選べばよいか」が分かりにくい段階にある。SORABOTのように仕様比較を提供するプレイヤーの存在は、市場の成熟度を上げる役割を果たしている。
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ブルーイノベーション:ポートの"脳"=VISで複数拠点運用を押さえる
BEPポート|VISは、ドローンポートを運用する上での情報統合(状態監視、周辺状況、連携)を担う位置付けだ。複数ポート・複数機運用が前提になるほど、VISの価値が大きくなる。
同社の強みは、ハードウェア(ポート本体)ではなく、運用管理のソフトウェア層を押さえていることだ。これにより、将来的に異なるメーカーのポートやドローンが混在する環境でも、統合管理の基盤として機能できる可能性がある。
防災領域では、一宮町の津波避難広報ドローンシステムが実際の津波警報下で稼働した実績があり、「Jアラート連動→自動出動→避難広報→状況把握」という業務シナリオ全体をパッケージ化している。自治体が欲しいのは"ドローン"ではなく"避難広報という機能"であり、BEPポートはこの需要に合致した設計になっている。
さらに、国産ドローンポートの4社コンソーシアムにも参画しており、ISO 5491準拠・外部システム連携を前提とした標準化の推進役でもある。
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IHI運搬機械:ドローンポートを"物流ノード"として設計
IHI運搬機械のDRONE PORTは、荷物の格納・一時保管・搬送連携を想起させる内容で、一般的な点検用途のドローンドックとは別の進化系だ。
「点検のためにドローンを飛ばして戻す」というサイクルではなく、「ドローンで荷物を運び、ポートで受け取り、地上の搬送手段へ渡す」というフローを想定している。これは、ドローン物流のインフラとしてのドローンポートだ。
ドローン物流が「ラストマイル配送」や「医薬品配送」として本格化した場合、こうした受け渡し拠点の設計は極めて重要になる。IHI運搬機械は、クレーンや搬送設備のメーカーとしての知見を持っており、「地上搬送×空路搬送の接続」という独自のポジションを持つ。
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ウィンゲート:自動充電ではなく"自動バッテリー交換"で稼働率を上げる
AtlasNESTは、全自動離着陸に加えて、自動バッテリー交換の説明が明確だ。
充電時間の問題は、ドローンポートの運用において見落とされがちだが、実は重要な論点だ。一般的なドローンバッテリーの充電には30分〜1時間程度かかる。監視・警備用途で「10分おきに飛ばしたい」といった要求がある場合、充電式では1台のドローンでは対応できない。
バッテリー交換式であれば、交換後すぐに再出動できるため、1台のドローンで高頻度の運用が可能になる。ただし、交換用バッテリーの在庫管理、交換機構の信頼性、バッテリーの劣化管理など、別の運用課題が生まれる点は考慮が必要だ。
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Red Dot Drone Japan:シンプルに"格納庫"を提供
Red Dot Drone Japanは、「待機・充電・無人運用が可能なドローンの格納庫」としてドローンポートを製品ページで明記している。
詳細な仕様情報は限定的だが、製品として「ドローンポート」を明確に打ち出している点で、国内プレイヤーの一つとして認識しておく価値がある。
参考リンク
導入検討のチェックリスト(企業比較の軸)
この記事を「そのまま比較検討」に使えるよう、最低限の比較軸をまとめる。
ハード要件
- 耐候性:動作温度範囲、防水防塵等級(IP等級)、耐風速
- 設置要件:必要な電源容量、通信環境(LTE/Wi-Fi/衛星)、設置面積
着陸精度の担保
- 方式:マーカー認識、画像認識(AI)、RTK-GNSS、ビーコン等
- 失敗時の挙動:リトライ、代替着陸地点、緊急着陸手順
エネルギー方式
- 自動充電:設備がシンプル、充電時間中は稼働不可
- バッテリー交換:稼働率が高い、在庫管理・交換機構の信頼性が必要
遠隔運用の実装
- ポート単体:ハードウェアとして完結、運用管理は別途必要
- VIS等の統合管理:複数拠点・複数機の統合管理、外部システム連携
拡張性
- API:外部システム(運航管理、施設管理、防災システム等)との連携
- 複数拠点・複数機対応:スケールアップ時の管理負荷
- 機体の互換性:特定メーカーの機体専用か、複数メーカー対応か
国内市場の現状と今後
現状:少数精鋭+用途特化
一次情報で確認できる国内プレイヤーは7社程度と、海外市場と比較してもまだ少ない。これは、日本のドローンポート市場がまだ「黎明期」にあることを示す。
市場が小さい理由は明確だ。ドローンポートの需要は「ドローンの無人運用」が前提であり、日本ではレベル4飛行(有人地帯での目視外飛行)の制度化が2022年12月と比較的最近だ。制度が整い、無人運用の実証・社会実装が進むにつれて、ドローンポートの需要も拡大すると見込まれる。
今後の論点
経済安全保障と国産化:重要インフラ(水道、電力、通信、交通)で使われるドローンポートには、データ主権やサイバーセキュリティの観点から国産化の要請がある。VFRやブルーイノベーションなど4社コンソーシアムが経産省SBIRフェーズ3に採択され、2027年の量産化を目指しているのは、この文脈だ。
標準化(ISO 5491):異なるメーカーのドローンが同一ポートを利用できる世界を実現するためには、国際標準への準拠が不可欠だ。国産コンソーシアムがISO 5491準拠を打ち出しているのは、将来の相互運用性を見据えた動きだ。
ビジネスモデルの分化:ハード販売だけでなく、クラウド運用(サブスク)、アウトカム課金(点検結果や監視ログへの課金)、防災DXパッケージ(Jアラート連動等)など、「運用の売り方」が多様化していく見込みだ。
参考リンク
参考リンク一覧
企業公式(製品ページ)
- VFR - Drone Port for ACSL-PF2
- VFR - EVO Nest
- SORABOT - DroneNest
- ブルーイノベーション - BEPポート|VIS
- ブルーイノベーション - ドローン自動巡回システム
- Red Dot Drone Japan - 製品情報
- IHI運搬機械 - DRONE PORT
- ウィンゲート - AtlasNEST
