はじめに
インドのドローン規制は、インド民間航空総局(DGCA)が「Drone Rules, 2021」に基づいて管理しています。最大の特徴は、手続きの大部分が「Digital Sky」というオンラインプラットフォームに集約されている点と、外国人に対する非常に厳しい制限です。本記事では、インドのドローン規制の枠組みと、特に注意すべき点について解説します。
最重要事項:外国人によるドローン飛行・輸入の原則禁止
インドのドローン規制を理解する上で、まず知っておくべき最も重要な点があります。
- 外国人による飛行の禁止: 2025 年現在、インドの法律では、外国籍の個人がインド国内でドローンを飛行させることは原則として認められていません。
- ドローンの輸入禁止: これに伴い、研究開発や防衛などの特別な許可がある場合を除き、外国製のドローンをインドに持ち込むこと(輸入)も原則として禁止されています。
商用目的でドローンを使用したい場合、外国企業はインド国内の事業体にドローンをリースし、そのインド事業体がすべての許認可を取得して運用する必要があります。したがって、外国人旅行者が趣味でドローンを飛行させることは、制度上不可能です。
Digital Sky プラットフォーム:インドのドローン規制の心臓部
インドのドローン規制は、この「Digital Sky」プラットフォームを中心に動いています。これは、ドローンに関するあらゆる手続きをオンラインで一元管理するシステムです。
- 機体登録: 250g を超えるすべてのドローンは、このプラットフォームで登録し、固有識別番号(UIN)を取得する必要があります。
- パイロットライセンス: 2kg を超えるドローンの商用利用に必要なパイロットライセンスの申請・発行もここで行われます。
- 飛行許可: 後述するイエローゾーンでの飛行許可申請も、Digital Sky を通じて行われます。
ドローンの分類と飛行ゾーン
ドローンの重量分類
ドローンは重量によって 5 つのカテゴリーに分類されます。
- ナノ: 250g 未満
- マイクロ: 250g 以上、2kg 未満
- スモール: 2kg 以上、25kg 未満
- ミディアム: 25kg 以上、150kg 未満
- ラージ: 150kg 以上
ナノドローンを非商用目的で飛行させる場合、パイロットライセンスは不要です。
飛行ゾーン
インドの空域は、ドローン飛行の観点から 3 つのゾーンに色分けされています。
- グリーンゾーン: 地上から最大 120m(400 フィート)までの飛行が、事前の許可なく許可されている空域。
- イエローゾーン: 飛行に事前の許可が必要な空域。主に空港周辺などが該当します。許可申請は Digital Sky を通じて行います。
- レッドゾーン: 原則として飛行が禁止されている空域。
NPNT (No Permission, No Takeoff)
インドの規制のもう一つの特徴が、「許可なくして離陸なし」を意味する NPNT です。これは、Digital Sky プラットフォームからデジタル形式で飛行許可を得ない限り、ドローンが物理的に離陸できないようにする技術的な要件です。すべてのドローンは、この NPNT に準拠している必要があります。
まとめ
インドのドローン規制は、Digital Sky プラットフォームによる先進的な管理システムを導入している一方で、外国人に対しては世界で最も厳しいレベルの制限を設けています。インドへの渡航を計画している場合、自身のドローンを持ち込んで飛行させることはできない、という点を明確に理解しておく必要があります。インドでのドローン活用は、現地の法律と事業体を介してのみ可能となります。