ドバイのドローン配送は、単発の実証を越えて、「BVLOS(目視外)」を前提にした制度・空域設計・運航の"商用パッケージ化"に進んでいる。象徴的なのが、Dubai Silicon Oasis(DSO)での複数ルート運用の開始と、DCAAが主導するU-space(低高度の無人機交通管理)の枠組み整備である。

2024年末には、DSOでの「中東初のドローン配送システム」ローンチが政府発表として出ており、2025年以降は運航ゾーン拡張(例:Nad Al Sheba)も具体的に進んでいる。

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制度・ルール:DCAA×Dubai Law×U-space

1) ドバイの法制度:Law No. (4) of 2020(無人航空機の包括法)

ドバイでは、無人航空機の運航・関連活動(試験、空港/離着陸施設、インフラ等)を広く規定するLaw No. (4) of 2020が根幹となっている。

特徴は、単なる「飛行許可」だけでなく、Air Routes(空路)Approved/Restricted/Prohibited Area(空域区分)インフラ/Unmanned Aircraft Airport(離着陸拠点)、そしてDubai Policeによる治安面の役割まで法体系に埋め込んでいる点である。

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2) DCAAの運航規則:DCAR-UAS(Issue 02)

DCAAのDCAR-UAS(Unmanned Aircraft System Operations)は、商用運航の要求を具体化した規制で、特に重要なのが以下である。

  • U-space airspaceを前提にした運航設計(「U-space支援がある空域でのみ運航」など)
  • BVLOSを"高リスク運航(High Risk Operations)"として整理し、リスク評価(SORA等)と手順承認を要求
  • **U-spaceサービス(Network ID / Geo-awareness / Flight authorization / Traffic info など)**を必須要件として制度側に組み込む

この「BVLOS=制度とUTM(交通管理)で包む」という設計思想が、ドバイの本気度を示している。

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3) 連邦(UAE)レベル:GCAAのU-space Service Provider制度

ドバイ(DCAA)だけでなく、UAE全体の仕組みとして、GCAAがU-space service provider(USSP)を認証する制度を整備している。

この文書は「誰がU-spaceサービスを提供できるか(認証・監督・監査・事故報告等)」を定義しており、都市型ドローン物流を"事業として成立させるためのインフラ"を制度化している点が重要である。

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テストゾーン/回廊:DSO(Dubai Silicon Oasis)を軸に段階的商用化

1) Dubai Experimental Zone(DSO内)

DSOには、ドローン物流を含むロボティクス/自律システムの実証を行うDubai Experimental Zoneがあり、Jeebly×Skye AirのBVLOS試験等がここで行われている。

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2) 回廊(air routes)づくり:Dubai Horizons

"どこを飛ぶか"を制度と都市計画に落とすのがDubai Horizonsで、DCAAとDubai MunicipalityがMoUを結び、**ドローンの飛行ルートと着陸地点(landing sites)**を計画・評価している。初期実装の場がDSOであることも明記されている。

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主要プレイヤー整理(役割別)

規制・制度設計

政策推進・実装(プログラム/試験枠)

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事業者(配送オペレーター/プラットフォーム)

  • Keeta Drone / Meituan:DSOで4ルートの運用・BVLOS商用ライセンス獲得が報道・公表され、海外展開の拠点としてドバイを位置づけ
  • Jeebly:Skye Airと組み、DSOで3週間のBVLOS実証を実施(消費財中心)

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医療機関・需要側(ユースケース牽引)

  • Fakeeh University Hospital(FUH):DSOから患者宅へ医薬品配送の試験を実施(中東初の医薬品ドローン配送試験として報道)

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ユースケース別:医薬品/フード/消費財/BVLOS商用/都市インフラ

1) 医薬品配送(医療物流)

**Fakeeh University Hospital→患者宅(10km圏)**の医薬品配送試験は、ドバイのドローン物流が「社会的意義の強い領域」から制度・運航の実装を進めた代表例である。

  • DSO内で実施
  • DFF・DCAAと協働した複数試験の延長線上
  • "迅速性・アクセス性・持続可能性"を強調

この流れは、単なる配送ではなく、緊急性・温度管理・確実性が問われる医療物流を、BVLOS運航に耐える形で制度設計する狙いに合致する。

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2) フード配送(都市型オンデマンド)

2025年にはNad Al Shebaで、モール(飲食店)→居住エリアのフード配送ルートが公式発表されている。着地点に**モスク(Nad Al Sheba Grand Mosque)**が出てくるのが、ドバイらしい「都市施設を拠点化する」発想である。

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3) 消費財(小口配送)

Jeebly×Skye AirのBVLOS試験は、**消費財(consumer goods)**を対象に、DSOのDubai Experimental Zoneで実施された。

ここでのポイントは、ドローン本体の性能というより、**運航の安全システム(パラシュート・衝突回避等)**と、**規制・運航要件の"洗い出し"**に焦点が当たっていることである。

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4) BVLOS商用運用(制度の核心)

2024年末のDSOローンチでは、「中東初のドローン配送システム」として、**専用の空路(dedicated air routes)**整備が強調されている。これは「飛ばしてみた」から「運航できる空の道をつくった」への転換点である。

加えて、DCAAとKeeta DronesのMoU(2025年)では、運航ゾーンの評価・インフラ要件・空域要件・安全要件を一体で詰める方針が明確である。つまり「商用拡大の前に、ゾーンごとに"運航パッケージ"を審査する」形である。

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5) 都市インフラ(配送以外のドローン運用)

DCAAのDCAR-UASには商用ユースケースとして建物/構造物点検、清掃、消防なども例示されており、物流で作った制度基盤を他領域へ横展開しやすい構造になっている。

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時系列まとめ(政策→試験→商用の流れ)

2018年

Dubai Sky Dome policy(無人機の"空のインフラ"構想)を政策として位置付け。

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2020年

Law No. (4) of 2020(無人機の包括法)制定。

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2021年

Dubai Programme to Enable Drone Transportation(ドローン輸送を可能にするプログラム)を始動(DSOが試験地)。

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2023年5月

DCAA×Dubai MunicipalityがDubai HorizonsでMoU(飛行ルート/着陸地点の計画)。

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2023年6月

Fakeeh University Hospitalの医薬品配送試験(中東初)。

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2023年10月

Jeebly×Skye AirがDSOで3週間BVLOS実証(消費財)。

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2023年11月

Dubai Horizonsの第1フェーズ完了(低高度空域の計画と着陸ゾーン特定)。

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2024年12月

DSOで「中東初のドローン配送システム」ローンチ(専用空路の整備を強調)。Keeta DroneがBVLOS商用ライセンス獲得として報道(中国本土以外での展開としても注目)。

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2025年1月

DCAA×Keeta DronesがMoU(運航ゾーン評価/インフラ・空域・安全要件を共同で詰める)。

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2025年10月

Nad Al Shebaで新ルート(フード配送)を公式発表、DSO外へ拡張。

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論点:ドバイが詰めている"最後の難所"

ドバイの勝ち筋は「制度設計→テストゾーン→専用空路→商用ルート拡張」が連続していることであるが、次に効いてくる論点は以下である。

  • U-space(USSP含む)を前提にした運航のスケール(どのエリアをいつU-space化し、誰がサービスを提供するか)
  • 都市施設(大学/モスク/モール等)を"ドローン港"にする際の合意形成(所有者、治安、騒音、運用動線)
  • 医療(緊急・高優先度)とフード(高頻度)の両立(優先制御、時間帯、ルート容量の設計)

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参考リンク一覧

法制度・規制

政策・プログラム

実証・商用運用

報道


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