はじめに
中国のドローン規制は、中国民用航空局(CAAC)によって非常に厳格に管理されています。他国と最も異なる点は、ドローンの重量に関わらず、すべての機体に「実名登録」が義務付けられていることです。安易な飛行は厳しい罰則につながる可能性があり、事前の入念な準備が不可欠です。本記事では、2025 年現在の中国におけるドローン規制の核心を解説します。
最重要:全機体必須の「実名登録制度」
中国でドローンを飛行させる上での絶対的な第一歩は、実名登録です。
- 対象: 重量 250g 未満のドローンを含む、すべてのドローンが対象です。例外はありません。
- 方法: CAAC のオンラインポータルを通じて、所有者の個人情報(外国人旅行者の場合はパスポート情報)、ドローンの機種やシリアル番号などを登録します。
- 義務: 登録が完了すると、固有の QR コードが発行されます。この QR コードを印刷し、機体の見やすい位置に貼り付けなければなりません。これが「空のナンバープレート」となります。
登録には中国の携帯電話番号や WeChat アカウントが必要となる場合があり、外国人旅行者にとっては最初のハードルとなる可能性があります。
基本的な飛行ルールと飛行禁止区域
登録を終えた後も、厳格な飛行ルールに従う必要があります。
- 高度制限: 趣味での飛行は、全国一律で地上 120mに厳しく制限されています。これを超える飛行には特別な許可が必要です。
- 目視内飛行: 常に操縦者の直接の視界の範囲内(VLOS)で飛行させる必要があります。
- 飛行禁止区域(No-Fly Zones): 以下のエリアは厳格な飛行禁止区域に指定されています。
- 空港周辺、国境線、軍事関連施設、政府機関の建物周辺
- 北京やチベット自治区などの特定の行政区画
- DJI 社のジオフェンシングシステムや、CAAC の公式アプリ(UOM)で最新の飛行禁止区域を確認することが不可欠です。
飛行計画と許可申請
多くの都市部や管理空域では、たとえ趣味の飛行であっても、事前にオンラインの飛行管理システム(UOM など)を通じて飛行計画を提出し、許可を得ることが求められます。許可なく飛行した場合、即座に当局によって探知され、罰則の対象となる可能性があります。
商用利用の厳しいハードル
中国でドローンを商用利用するためのハードルは非常に高いです。
- 商用ライセンス: 専用の商用ライセンスの取得が必須です。
- 事業者要件: ドローンを運用する事業者は、中国国内で登記された法人であり、かつその法定代表者が中国国民でなければならない、といった厳しい要件があります。これにより、外国企業や個人が直接、中国でドローンビジネスを展開することは極めて困難です。
外国人旅行者へのアドバイス
中国でドローンを飛行させたいと考える外国人旅行者は、世界でも特に厳しい規制に直面します。安易な飛行は高額な罰金や機体の没収につながるため、以下の点を十分に理解してください。
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全機体必須の「実名登録」: 国籍やドローンの重量を問わず、すべての機体は CAAC のオンラインシステムで実名登録が必須です。登録には中国の携帯電話番号が必要となる場合があり、これが最初のハードルです。登録後に発行される QR コードは、必ず機体に貼り付けてください。
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持ち込みと税関: 個人的な利用目的で 1 台のドローンを中国に持ち込むこと自体は通常許可されます。ただし、税関でのトラブルを避けるため、申告できるように準備し、購入証明や登録情報などをすぐに提示できるようにしておくことが賢明です。バッテリーは必ず機内持ち込み手荷物に入れてください。
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商用飛行は実質不可能: 外国人が中国で商用ライセンスを取得し、ビジネスを行うことは、法律上の事業者要件(代表者が中国国民であることなど)により、実質的に不可能です。
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趣味飛行の許可申請: 都市部の多くは飛行許可が必要なエリアです。許可申請はオンラインで行いますが、言語や住所の壁があり、旅行者が独力で完了させるのは非常に困難です。
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厳しい罰則: 無許可飛行などの違反に対する罰則は非常に厳しく、最大 50,000 元(約 100 万円)の罰金、機体の没収、さらには公衆の安全を脅かしたと見なされた場合は刑事責任を問われる可能性があります。
結論として、外国人旅行者が中国でドローンを飛行させることは、制度上は可能ですが、手続きの複雑さと厳格な罰則から、非常におすすめできません。挑戦する場合は、専門の代行業者に依頼するなど、万全の準備が不可欠です。
まとめ
中国におけるドローン飛行の鉄則は「まず登録、次に許可」です。すべてのドローンに実名登録が課され、飛行場所や目的によっては事前の許可申請が必須となります。これらの手続きを怠ると、機体の没収や高額な罰金、さらには刑事罰につながるリスクさえあります。中国の空を楽しむためには、ルールを正しく理解し、慎重に行動することが何よりも重要です。