はじめに

カナダのドローン規制は、カナダ交通省(Transport Canada)によって管理されており、飛行のリスクに応じて「ベーシック業務(Basic Operations)」と「アドバンスト業務(Advanced Operations)」の 2 つの主要なカテゴリーに分けられています。2025 年には、特に目視外飛行(BVLOS)に関する新しいルールが導入され、規制はさらに進化します。本記事では、これらの基本的な枠組みと最新動向を解説します。

第一歩:ドローンの登録と操縦者証明書

カナダでドローンを飛行させるには、まず以下の準備が必要です。

ドローンの登録

重量が 250g 以上 25kg 未満のドローンは、すべてカナダ交通省に登録し、発行された登録番号を機体に明記する必要があります。

操縦者証明書

操縦者は、計画している飛行の種類に応じて、いずれかの証明書を取得しなければなりません。

  • ベーシック操縦者証明書 (Pilot Certificate - Basic Operations): 14 歳以上で、オンラインの「Small Basic Exam」に合格すると取得できます。
  • アドバンスト操縦者証明書 (Pilot Certificate - Advanced Operations): 16 歳以上で、より難しい「Small Advanced Exam」に合格し、さらに認定ドローンスクールによる飛行レビュー(実技評価)を完了する必要があります。

2 つの運用カテゴリー:ベーシック vs アドバンスト

ベーシック業務 (Basic Operations)

趣味や低リスクな環境での飛行を対象としています。以下の条件をすべて満たす必要があります。

  • 空域: 非管理空域(Uncontrolled Airspace)でのみ飛行。
  • 人との距離: 第三者(Bystanders)から常に水平方向に 30m(100 フィート)以上の距離を保つ。
  • 人の上空: 第三者の上空を絶対に飛行しない。

アドバンスト業務 (Advanced Operations)

ベーシック業務の条件を一つでも満たせない、より複雑な飛行が該当します。アドバンスト証明書があれば、以下の飛行が可能です。

  • 空域: 管理空域(Controlled Airspace)での飛行(要許可)。
  • 人との距離: 第三者の 30m 以内で飛行。
  • 人の上空: 安全基準を満たしたドローンを使用すれば、第三者の上空を飛行可能。

2025 年の新展開:より高度な飛行へ

2025 年 11 月 4 日より、アドバンスト操縦者には新たな権限が付与され、規制がさらに拡大します。

  • Sheltered Operations: 建物などの構造物の近くで、一時的にドローンが視界から外れる飛行が可能になります。
  • Extended Visual Line-of-Sight (EVLOS): 補助者の助けを借りて、パイロットの直接の視界を超えてドローンを飛行させることが可能になります。
  • Complex Operations: より高度な目視外飛行(BVLOS)を行うための新しい「Level 1 Complex Operations」証明書が導入されます。これには追加のトレーニングと試験が必要です。

すべての飛行に共通するルール

  • 飛行高度は地上 122m(400 フィート)を超えない。
  • 緊急事態(火災や事故現場)や、コンサートなどの屋外イベントの妨げにならないようにする。
  • 常に安全な運用を心がける。

外国人旅行者のための注意点

カナダで外国人観光客がドローンを飛行させるための手続きは、他の国と比較して非常に厳格です。カナダ国民や永住者でない場合、「外国人オペレーター」と見なされ、特別な手続きが求められます。

  • SFOC(特別飛行運用証明書)が必須: 趣味か商用かを問わず、250g 以上のドローンを飛行させるすべての外国人オペレーターは、事前にカナダ交通省からSFOC (Special Flight Operations Certificate) を取得する必要があります。

  • カナダの操縦者証明書も必須: SFOC の申請とは別に、操縦者自身もカナダのドローン操縦者証明書(ベーシックまたはアドバンスト)を取得しなければなりません。オンライン試験に合格する必要がありますが、アドバンスト証明書の場合は、カナダ国内での対面による飛行レビューが必要です。

  • 二重の手続き: つまり、外国人旅行者が 250g 以上のドローンを飛ばすには、「カナダの操縦者証明書の取得」と「SFOC の申請」という二重の手続きが必要となり、大きな準備と時間が必要です。SFOC の申請時には、自国での飛行許可を証明する書類の提出も求められます。

  • 唯一の簡単な選択肢:250g 未満のドローン: これらの複雑な手続きが免除されるのは、重量が 250g 未満のマイクロドローンのみです。登録や証明書、SFOC も不要なため、カナダ観光でドローン空撮を楽しみたい旅行者にとっては、これが最も現実的で簡単な選択肢となります。

結論として、カナダに 250g 以上のドローンを持ち込んで飛行させる計画は、手続きの複雑さからお勧めできません。マイクロドローンを利用するか、飛行を諦めるかを慎重に検討する必要があります。

まとめ

カナダのドローン規制は、飛行したい場所や方法によって「ベーシック」か「アドバンスト」かが明確に分かれる、実践的なシステムです。自分がどちらの業務を行うかを正しく理解し、適切な証明書を取得することが、カナダの空で安全にドローンを楽しむための鍵となります。2025 年からの新ルールにより、特にアドバンスト操縦者の活躍の場はさらに広がっていくでしょう。