はじめに
ブラジルにおけるドローン(無人航空機)の規制は、主に国家民間航空庁(ANAC: Agência Nacional de Aviação Civil)と空域管制部(DECEA: Departamento de Controle do Espaço Aéreo)の二つの機関によって管轄されています。ANAC は機体登録と操縦者ライセンスを、DECEA は空域の管理と飛行許可を担当しています。
機体登録と操縦者ライセンス
機体登録(SISANT)
- 対象: 250g を超えるすべてのドローンは、ANAC が運営するオンラインシステム「SISANT (Sistema de Aeronaves Não Tripuladas)」での登録が義務付けられています。登録後、機体には識別番号を明記する必要があります。
- 目的別分類: ドローンは運用目的によって以下の 3 つのクラスに分類されます。
- Class 1: 最大離陸重量が 150kg を超えるドローン。
- Class 2: 最大離陸重量が 25kg を超え 150kg 以下のドローン。
- Class 3: 最大離陸重量が 250g を超え 25kg 以下のドローン。
操縦者ライセンス
- Class 1 および Class 2: これらの大型ドローンを操縦するには、ANAC が発行する操縦者ライセンスが必要です。これには、理論試験と実技試験が含まれます。
- Class 3: 250g を超え 25kg 以下のドローン(一般的なコンシューマードローン)を操縦する場合、商用利用であればライセンスが必要となる場合があります。趣味での利用であれば、通常はライセンスは不要ですが、オンラインでの知識テストや安全講習の受講が推奨されることがあります。
賠償責任保険の義務化
ブラジルでは、登録されたすべてのドローンに対して、第三者に対する賠償責任保険の加入が義務付けられています。これは、万が一の事故の際に、人や物への損害をカバーするためのものです。
空域の管理と飛行許可(DECEA)
DECEA はブラジルの空域を管理しており、ドローンの飛行許可を発行します。
- 飛行計画の提出: 特定の空域(空港周辺、軍事施設、人口密集地など)や、特定の条件下での飛行(夜間、目視外など)を行う場合、DECEA への飛行計画の提出と承認が必要です。
- 飛行禁止区域: 空港の周辺、軍事基地、刑務所、政府機関の建物、国立公園などは、原則としてドローンの飛行が禁止されています。
外国人旅行者のための注意点
ブラジルでドローンを飛行させたい外国人旅行者は、ブラジル国民と同様の規制に従う必要があります。
- 登録とライセンス: 250g を超えるドローンを飛行させる場合、ANAC への機体登録と、必要に応じて操縦者ライセンスの取得が求められます。ただし、SISANT での登録にはブラジルの納税者番号(CPF)や現地の住所が必要となるなど、外国人にとっては手続きが複雑になる可能性があります。
- 言語の壁: 申請プロセスはポルトガル語が主となるため、言語の壁も考慮する必要があります。
- 現実的な選択肢: 手続きの複雑さと、現地の法律を完全に理解することの難しさから、外国人旅行者がブラジルでドローンを飛行させることは、あまり現実的ではないかもしれません。特に、趣味での飛行であれば、250g 未満のドローンを使用し、飛行禁止区域を厳守することが最も安全な選択肢となります。
まとめ
ブラジルのドローン規制は、ANAC による機体登録と操縦者ライセンス、DECEA による空域管理と飛行許可という二本柱で構成されています。特に、250g を超えるドローンには登録と保険が義務付けられ、特定の飛行には許可が必要です。外国人旅行者にとっては手続きのハードルが高いため、渡航前に十分な情報収集と準備を行うか、250g 未満のドローンでの飛行に留めることを強く推奨します。